2026-06-22

医療機関・クリニック向けサイバーセキュリティ補助金【2026年版】

「ランサムウェアに感染したら診療を停止しなければならないのか」「電子カルテシステムを守るセキュリティ対策にかかる費用を補助してもらえるのか」——医療機関の経営者・事務長からこうした相談が急増しています。

近年、病院・クリニック・診療所を狙ったサイバー攻撃が深刻化しています。2022年の大阪急性期・総合医療センターへのランサムウェア攻撃は約2ヶ月の診療停止を招き、社会に大きな衝撃を与えました。こうした背景から、国はサイバーセキュリティ対策を支援するための補助金・助成金制度を整備しています。

この記事では、医療機関・クリニックが活用できるサイバーセキュリティ補助金を解説します。令和8年度(2026年度)の最新情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。


医療機関がサイバー攻撃の標的になりやすい理由

医療機関は、他の業種と比べてサイバー攻撃の被害が特に深刻になりやすい特徴があります。

患者情報の高い価値

電子カルテには患者の氏名・生年月日・病歴・処方内容など、極めて機密性の高い個人情報が集中しています。これらの情報は闇市場で高値で売買されるため、攻撃者にとって魅力的なターゲットです。

古いシステムや脆弱な環境

医療機関では、高額な医療機器に組み込まれた古いOSが長期間使用されるケースがあります。サポートが終了したWindowsやLinuxが稼働したまま外部ネットワークに接続されると、既知の脆弱性を突かれるリスクが高まります。

「停止できない」という弱点

病院やクリニックは、患者の命に関わるシステムを停止することができません。攻撃者はこの弱点を利用し、「身代金を払えばすぐに復旧できる」という状況を作り出します。これがランサムウェア攻撃が医療機関に集中する理由の一つです。

⚠️医療情報システムの安全管理ガイドライン(第6.0版)

厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」(2023年5月)でサイバーセキュリティ対策の強化を求めています。診療所を含むすべての医療機関が対象となるため、補助金を活用して計画的に対策を進めることが重要です。


令和8年度医療機関診療情報サイバーセキュリティ対策支援事業とは?

国は、医療機関のサイバーセキュリティ対策を支援するため、「医療機関診療情報サイバーセキュリティ対策支援事業」を実施しています。

事業の目的

本事業は、医療機関が診療情報を安全に管理するために必要なサイバーセキュリティ対策の導入・強化を支援することを目的としています。電子カルテシステムや医療情報システムを標的にしたランサムウェアなどのサイバー攻撃から医療機関を守るための費用を補助します。

対象となる医療機関

病院・診療所・歯科診療所・薬局など、診療情報を取り扱う医療機関が対象です。規模の大小を問わず、個人クリニックも申請できます。

対象となるセキュリティ対策

主に以下のような取り組みが補助対象として想定されています:

  • 次世代ファイアウォールの導入・更新
  • **EDR(エンドポイント検出・対応)**ツールの導入
  • 脆弱性診断・ペネトレーションテストの実施
  • バックアップシステムの強化・クラウド化
  • **セキュリティ監視サービス(SOC)**の契約
  • 職員向けセキュリティ研修の実施

ℹ️最新の補助上限額・補助率は公式サイトで確認を

補助上限額・補助率・申請期限などの詳細は年度ごとに変更されます。最新情報は厚生労働省または経済産業省の公式ウェブサイトでご確認ください。

申請の流れ

  1. 事前準備:自院のセキュリティ現状評価(脆弱性診断など)
  2. 申請書類の準備:事業計画書・見積書・現況確認書類など
  3. 申請:公募期間中にオンライン申請または郵送で提出
  4. 審査・採択通知:書類審査後に採択結果を通知
  5. 事業実施:採択後にセキュリティ対策を実施
  6. 実績報告:完了後に成果報告書を提出し、補助金を受領

デジタル化・AI導入補助金でセキュリティツールを導入する方法

医療機関に特化した補助金以外にも、中小企業・小規模事業者全般が活用できるデジタル化・AI導入補助金2026(旧:IT導入補助金)でセキュリティツールを導入することができます。

セキュリティ対策ツールが対象に

デジタル化・AI導入補助金では、情報セキュリティに関するITツールも補助対象となっています。具体的には:

  • ウイルス対策・マルウェア対策ソフト
  • 不正アクセス防止ツール
  • クラウドストレージ(セキュアな情報共有)
  • 電子カルテシステム(セキュリティ機能付き)
区分補助率補助上限
通常枠(50万円以下)3/4(小規模4/5)50万円
通常枠(50万円超)2/3350万円

医療法人・個人クリニックも対象

デジタル化・AI導入補助金は、個人事業主・小規模事業者・中小企業が対象です。医療法人・個人クリニックも多くの場合、対象となります(従業員数・資本金の要件を満たすこと)。

申請前にSECURITY ACTION自己宣言が必要

デジタル化・AI導入補助金の申請には、IPA(情報処理推進機構)のSECURITY ACTION自己宣言(★一つ星以上)が必須要件です。費用は無料で最短即日取得できます。

→ 詳しくはSECURITY ACTION自己宣言の取得手順をご覧ください。

第3次締切(2026年7月21日)が直前に迫っています

デジタル化・AI導入補助金2026の第3次締切は2026年7月21日です。GビズIDの取得に最大1ヶ月かかる場合があるため、今すぐ準備を開始してください。


セキュリティ対策に使える補助金・助成金の比較

医療機関がセキュリティ対策に活用できる補助金・助成金を比較します。

制度名対象主な用途特徴
医療機関診療情報サイバーセキュリティ対策支援事業医療機関全般セキュリティ対策全般医療機関専用
デジタル化・AI導入補助金中小・小規模事業者ITツール・ソフト導入汎用・申請しやすい
中小企業省力化投資補助金中小・小規模事業者省力化ツール全般最大8,000万円
都道府県独自の助成金地域内事業者セキュリティ対策費地域により異なる

ℹ️都道府県の独自助成金も確認しよう

東京都・大阪府・神奈川県など、多くの都道府県が中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援する独自の助成金制度を設けています。国の補助金と併用できる場合もあるため、自治体の産業振興課に相談してみましょう。


補助金申請前に準備しておくべきこと

1. 現状のセキュリティリスクを把握する

補助金の申請書類では、「現状の課題」を具体的に記載する必要があります。まず自院のセキュリティ状況を整理しておきましょう。

  • OSやソフトウェアのバージョンが古くなっていないか
  • バックアップが定期的に取得されているか
  • 職員のセキュリティ教育が実施されているか
  • 外部からの不正アクセス対策が施されているか

2. GビズIDを事前に取得しておく

国の補助金(デジタル化・AI導入補助金など)の申請にはGビズIDが必要です。2026年7月以降、書類審査に最大1ヶ月かかる場合があるため、早めに取得しておくことが重要です。

GビズID取得の手順と注意点

3. 認定支援機関・ITベンダーに相談する

医療機関向けセキュリティ補助金は、申請書類の作成に専門知識が求められます。認定支援機関(税理士・商工会議所・ITコーディネータなど)やセキュリティ専門のITベンダーに相談することで、採択率を高められます。

⚠️採択後に補助金が入ること。先払いに注意

補助金は「後払い」が原則です。セキュリティ対策の費用はいったん自己負担し、実績報告後に補助金が振り込まれます。資金繰りの計画を立てておきましょう。


よくある失敗・落とし穴

「補助金があるから対策を始める」という発想の罠

サイバー攻撃はいつ起こるかわかりません。「補助金が採択されてから対策する」では遅い場合があります。緊急性の高い対策(パスワードポリシーの見直し、多要素認証の導入など費用のかからない対策)は今すぐ実施し、補助金は追加的なセキュリティ投資に活用するという姿勢が理想的です。

補助対象外の費用を計上してしまう

補助金にはそれぞれ対象経費・対象外経費が細かく規定されています。人件費・日常的な保守費用・既存システムの維持管理費などは補助対象外になるケースが多いため、事前に公募要領を確認してください。

申請期限を見落とす

補助金は公募期間が限られています。気づいたときには申請期限が過ぎていた、ということがないよう、補助金の公募日程一覧で定期的にスケジュールを確認しましょう。


まとめ

  • 医療機関を標的にしたサイバー攻撃が急増しており、国・自治体が補助金・助成金で対策を支援している
  • 令和8年度医療機関診療情報サイバーセキュリティ対策支援事業は医療機関専用の支援制度で、詳細は公式サイトで確認が必要
  • デジタル化・AI導入補助金2026でもセキュリティツールの導入費用を補助できる(第3次締切:2026年7月21日)
  • 申請前にGビズIDSECURITY ACTION自己宣言を取得しておくことが必須
  • 認定支援機関やセキュリティ専門ベンダーと連携して、採択率の高い申請書を作成しよう

補助金ナビで、医療機関が活用できる補助金をさらに検索できます → 補助金ナビ

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